モグラの銀幕ノスタルジー
汚れ戯なき悪戯
さらばアフリカ
赤い風船
遥かなる青い海
抵抗の詩
ワン フロム・ザハート

みどりの壁
晴れた日に永遠が見える
黒いオルフェ
VOL.7 みどりの壁  THE GREEN WALL
カルロ・ビヴァリ映画祭、シカゴ映画祭、バルセロナ映画祭、パナマ映画祭最優秀作品賞受賞
ジャーナリスト、作家だったゴドイ監督の官僚主義への痛烈な批判!
1971年ペルー映画
 スタッフ                キャスト
監督 アルマンド・ロブレス・ゴドイ   マリオ   フリオ・アレマン
脚本 アルマンド・ロブレス・ゴドイ   デルバ   サンドラ・リバ
撮影 マリオ・ロブレス・ゴドイ     ロムロ   ラウル・マルチン坊や
音楽 エンリック・ピニラ        
編集 アティリオ・リナルディ

「みどりの壁」という映画はあまり皆さんに知られていないかもしれない。
だが数々の賞を受賞し、日本で初めて公開されたペルー映画だ。
きっとこの映画を観られた方には忘れられない作品となっていることだろう。

ここでいう緑とはペルーの未開のジャングルのことだ。
人里離れた一軒家に住む開拓者親子3人の物語である。
可愛い1人息子のロムロはようやく小学生になる位の年だが遊ぶ友もなく1人ぼっちで、
空き缶とワイングラスを使った水車を作りチ−ン、チ−ンと鳴らして楽しんでいた。

しかし夢中になって遊んでいたロムロは毒蛇に噛まれてしまう。
ところが運の悪いことにその日、山奥の町へ大統領が視察に来るということで交通がとめられ
困難の中必死の両親によりロムロが運ばれた病院では、院長が血精保管金庫の鍵を持ったまま
大統領歓迎集会にでかけてしまっていたのだ。父親は急ぎ院長を連れ戻しにいくが決局まにあわず
ロムロの命がなくなってしまう。

印象に残る美しい映像、特にインディオの子供達の丸木船に囲まれてロムロのお棺をのせた船で両親が
川を下るシーンは名場面といわれている。そして美しく澄み渡るギターの音色はテーマミュージック、
バッハのカンタータ140「目覚めよと呼ばれるものみの声高し」。
ロムロが亡くなった夜、チ−ンチ−ンと鳴り続けていた水車の音に気付いて見に行った父親は
我慢できなくなって潰してしまう、が再びもとどおりになおして気をとりなおす。そしてこの不幸の
どん底の夫婦が抱擁しあった時バッハのカンタータが流れだすと、自然の中で素朴に純粋に真面目に精一杯
生きてきた夫婦にこれ以上の不幸があっては許されないと言うかのように、
暖かい光りと希望に導かれ新らしい未来へ進んで行きなさい、あなたたちが生かされていることに
感謝してと励ましているかのようである。この不幸のどん底においては新らしい素晴らしい未来しかないのだと
悲しみの後からも観る者に希望と歓びを力強く与えてくれる。

古い映画とはいえ、永遠の名作はいつまでも永遠だ。

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Vol.8  晴れた日に永遠が見える ON A CLEAE DAY YOU CAN SEE FOREVER
  ブロードウェイミュージカルを映画化した魔可不思議なラブコメディ
   1970年アメリカ映画
      スタッフ               キャスト
  監督・・ビンセント。ミネリ      デイジ−・・   バーブラ・ストライサンド
  脚本・・アラン・ジェイ・ラ−ナ−   Dr.シャボー・・イヴ・モンタン
  音楽・・バートン・レーン       タッド・・    ジャック・ニコルソン
  撮影・・ハリー・ストラドリング
          

花を育てることにかけて天才的なアメリカ女性デイジ-(バーブラ・ストライサンド)はとっても
キュートでフアンキーな愛すべき娘。超真面目で四角四面なバカな婚約者を愛するあまり、
彼に迷惑をかけたくない一心で大学の有名心理学者Dr.シャボー(イヴ・モンタン)の所ヘ出向い、
タバコをやめる為の催眠術治療を開始する。ところが、彼女はまれにみる催眠術にかかりやすい
タイプだったのである。半信半疑で治療を始めたDr.シャボーもびっくりする秘密がデイジ−の
言葉から出て来たのである。なんとそれは彼女の前世、英国の淑女メリンダの出現であった。
彼女の魅惑的な前世の物語りを催眠治療で聞く度に、彼女に恋せずにはいられない。
しかし、目を覚ましたデイジ−は只のつまらないヤンキー娘。ただ、人と違って不思議な力を
持ってはいるが、花に話しかけたりする事はみんなからおかしな人扱いされるだけなのだ。
おかしな自分に自信のないデイジ−だがDr.シャボーに恋心を抱くようになったが、Dr.はデイジ−
ではなく自分の前世メリンダを愛している事を知ってしまい彼の所から姿を消す。
しかし不思議な力を持つデイジーにDr.は戻っておいでとテレパシーを送りつづける。

その後の二人はどうなったかというのは、見てのお楽しみだが、なんといってもこのお話は
主人公デイジ−の持つ不思議な力が魅力的に描かれている。
きっと誰でも花にしゃべりかければ花は喜んで一生懸命咲くだろうし、相手の事を深く愛したり
思いやりの心を持つと人が何を求めているのかきっと解る事なのだと思う。
現代に生きる者はそんな当たり前の事を忘れてしまってるだけなのだろう。
バーブラとイヴ・モンタンの歌うテーマソングがすべての人に送るメッセージになっている。


晴れた日には、周りをよく見てごらんなさい

自分の事がわかるでしょう

晴れた日に きっとあなたは驚くでしょう

あなたの存在の素晴らしさは

星よりも輝いている

あなたは自然の一部

山や海があなたの中にある

見知らぬ世界を遠くに近くに

生き生きと感じとる事が出来るでしょう

よく晴れた日に永遠が見える

果てしない未来が

遥かな遠くの永遠が見える

古い映画とはいえ、永遠の名作はいつまでも永遠だ。

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VOL.9          「黒いオルフェ」
  ORFUE  NEGRO
   1959年度カンヌ国際映画祭グランプリ受賞 1960年アカデミー外国語映画作品賞受賞
       ボサ・ノヴァ、サンバを本格的に世界に紹介した画期的な作品
1958年フランス映画
監督 マルセル・カミュ
脚本 ジャック・ヴィオ、M、カミユーヴィニシュス・ジ・モラエスの原作にもとづく
撮影 ジャン・ブールゴワン
音楽 アントニオ・カルロス・ジョビン、ルイス・ボンファ
 
出演 オルフェ  ブレノ・メロ
   ユリディス マルぺッサ・ド−ン
   ミラ    ロールデス・デ・オリヴェイラ
   死の仮面の男  アデマール・デ・シルヴァ

2000年9月、日本でも新しい「オルフェ」がロードショー公開される。
フェアリーへヴンでは私も大好きな1958年の作品「黒いオルフェ」を紹介しようと思う。
故マルセル・カミユ監督の傑作で、2500年前のギリシャ神話をブラジル、リオのカーニバルに持って来たお話。
ほとんどの出演者は素人だというがそれが素朴さを醸し出している。

お話は市電の運転士オルフエと田舎娘ユリディスとの運命的な出合いとそれを襲う死、
そしてそれをも越えた永遠の愛が描かれていく。

1958年のリオのカーニバルを中心にオール・ロケで撮影されたというが
太陽の眩しい光と華やかな輝くばかりの衣裳にかこまれた目も覚めるばかりの映像は素晴らしいの一言だ。
そしてこの作品でボサノヴァ、サンバを本格的に世界へ紹介することになり「オルフェの歌」
「悲しみよさようなら」「カルナヴァルのサンバ」他数々の名曲がアントニオ、カルロス、ジョビン 
ルイス・ボンファによって生み出されて今に歌い継がれている。

オルフェとユリディスは一目見た時から運命の出合いを感じそこから純粋な愛が生まれる。
ところがユリディスを何故か追って来る死の仮面の男から彼女を救おうとして逆に死に追いやってしまった
オルフェは何とか生き返らせようと、祈祷(ブ−ドゥ)を受けに行く。しかし彼女の声が聞こえても決して
振り返ってはいけないと言われたものの思わず振り返って死を決定的にしてしまう。

霊安室に死体を探しに行った時の掃除男の台詞が印象的だった。それは霊界と人間界は同じ場所なのだが、
人間に霊が見えないのと同じで霊にも人間が見えない、死者に逢いたければ自分も死ねば良いというものであった。
朝になりオルフェはユリディスの死体を抱いて丘の上の自宅へと戻ってくると嫉妬に狂ったオルフェの婚約者
ミラが投げた石に当たって命を落とすことになる。

ラスト、少女がオルフェのギターを持つ少年に「私の為に太陽を昇らせて。」と頼み永遠の愛に憧れながら
少年の弾く「オルフェのサンバ」を楽しく踊りだす朝日の中での映像は、決して哀しくはない力強い生命力を充分に感じさせてくれる。

いよいよ公開まじかの「オルフェ」は少し現代的な内容になっているようだがこちらもまた楽しみでならない。

古い映画とはいえ永遠の名作はいつまでも永遠だ。
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